地図を扱った学問として地図学というものがあります。基本的には地図作成にあたっての芸術、科学、技術を扱うもの、と定義されており地図作成に密接な測量分野は別途構築された分野と扱われ含んでいません。定義中で意外なのは地図が「芸術」を扱うものとされていること。どうも地図が測量で得たデータを単に機械的に展開するにとどまらず、地図を作成するにあたっては、得られたデータをどのような形態で、どのようにデザイン化し作っていくかという、機械的作業とは違うデザインセンスも要求されるからではないかと推測されます。科学という文言が入っているのも面白いですが、こちらは取得データをビジュアルに落とし込んでいく過程がまさに各種経験則や研究成果と言った科学的要素を盛り込まないと進めていけない、ということに基づいていると言われています。このように考えていくと、一口に地図と言っても、分野は違いますが正確な測量結果を得ることから、そのデータを地図素材として最大限生かしていくために、どのようにして見やすく・わかりやすい形態に表現していくかと言った検討を経たうえで完成させていくデザインセンスと技術・科学の両輪がうまくかみ合わさって初めてできるもの、と言ってもいいのではないでしょうか。


地図表現と色

色相環に基づいて地図の彩色を説明すると、太陽のスペクトル部分の色は、使い勝手が良いのでお薦めします。具体的には、順序尺度の表現において、スペクトルの順序を踏襲すればよいのです。色彩学という領域も存在しているので、エビデンスに基づいて援用することが出来ます。初学者は明度単独で順序尺度を表現しようとしたり、彩度を用いようとしたりしますが、実際は組み合わせる必要があります。というのも、せいぜい表現できるのは5段階程度であり、とても実用に耐えられるものではありません。明度や彩度はあくまでも補助変数であることを認識して下さい。それでは名目尺度を彩色するケースを考えます。まず初学者であれば、慣用例に従うのは鉄則です。迷ったら必ずここに立ち戻るようにしましょう。次に、イメージを通して色を選択してみます。最後に、面積の大きさを顧慮します。この順序で色を選ぶようにすれば、大きな間違いは犯さないはずです。ところで、地図の彩色とデザインとの関係性はどうなのでしょうか。結論から言えば、地図の表現とデザイン表現とは、同一視するべきではありません。というのも、地図独自の文法が存在し、彩色もその文法を大きく逸脱するわけにはいかないからです。もちろん文法に従えば選択の幅は狭まりますが、だからといって自由が全く認められないわけではありません。色相環を見れば分かるように、同色系統の色がたくさん存在するのですから、そこから自分のイメージに合った色を選べばよいのです。明度、彩度も拘束されませんから、好きに選べます。専門書が勧める色の組み合わせ等を参考にしつつ、最後は自分の感性を信じて選択しましょう。


色使いを考えよう

何気なく見る地図も色が使ってありますが、アート作品のように色使いが多すぎると見難いというか醜いような気がします。地図の中で「色」というのはどんなものでしょうか。地図は位置や広さを表すのが主ですが、位置を色分けすることができても、広さを表すことはできません。けれど、色分けすることによって表せる表現はたくさんあります。

例えば、山。山の山頂を濃い色焦げ茶、だんだん色が薄くなって、平野部は緑色という地図をよく見ますが、この色分けは山の高さをよく表しています。これは色における目の錯覚を利用したものだそうです。また、暖色系は膨張色、寒色系は収縮色とのことで、同じ区画で色分けするときにこの声質を使うこともよくあります。そういえば氷に覆われた国などを寒色系やアフリカの熱帯の当たりは暖色系を使っていますね。当たり前のように見ていた地図ですが、そう言われてみると納得の色使いです。

地図の色使いには本当は決まりがないそうです。地図学会のようなところでも、色使いを話し合われたこともあまりないそう。好きなように使ってもいいらしいです。それでも海や水の色は青からのグラデーション、山の色は茶色のグラデーションと、誰もが自然に受け入れられる色使いですね。色使いに法則はないとはいえ、慣用例を外れるのもよくないともいえます。

慣用例とは、工場地帯は赤系、果樹園が橙系、田んぼは水系、緑地は緑、荒野は茶色など、なんとなく決まっている色使いがあるようです。ただし、果樹園がりんご畑なら「赤」を使っても良いのです。イメージを優先させて色使いを決めてみましょう。

また、災害マップなどで土壌が描かれた地図をよく目にします。あのように色を分けることによって地盤の強度を描き分けられることができるのも色彩の力だと思います。